私たちの住むムンバイ


紅茶のウンチク


 カレーについで、インドを有名にしている紅茶。
「インドに行ったらおいしい紅茶が飲めるわね。紅茶好きな、あなただから楽しみでしょう?」と、出発前に、日本ティーインストラクター(紅茶のソムリエ)の友人に羨ましがられました。

 私が、中学生のころ、日本も紅茶の輸入自由化となり、そのころから紅茶好きの私は新しいブランドが売り出されるたびにあれこれ試して、紅茶とのちょっと長い付き合いや思い入れがあります。当時はリプトンの缶入りや、トワイニングのオレンジ・ペコ、アッサムのミルクティーなんていう紅茶を気取って飲んでいたりしました。結婚後は主人が出張で持ちかえる流行し始めたフォーションのアップルティー、F&Mのアールグレイ、エデュワールのダージリンなどを、紅茶の本のアドバイスどおりポットで入れて茶漉しで漉してのんだりしました。東京・青山に出来た、紅茶専門店のマリアージュ・フレーヌで、お店の人から、紅茶の産地、紅茶の煎れ方をずいぶん足しげく通って教えてもらったりしました。ロンドンでは、フォートナム&メイソンでは、好きが嵩じて紅茶づけになりました


 インドには、ダージリン、アッサム、ニルギリという3大紅茶産地があります。この産地の地名からダージリンティー、アッサムティー、ニルギリティーと呼ばれていて、インドは世界最大の紅茶生産地で最大輸出国です。ボンベイに来て、「紅茶専門店はどこにありますか。」と聞いても、みんな首を傾げるばかり。「じゃ、在留邦人の方々は、どの紅茶を飲んでいるの。」と聞いたら、「ローマン・ストア(雑貨屋)に売っているロプチューンというブランドの紅茶くらいかしら、皆さんこれをお土産にお持ち帰りになりますよ。」との事、早速、買い求め、飲んでみましたが、この紅茶は、日本のスーパーマケットに売っているリプトンや、トワイニングのティーパックよりまずい。色は出るけど香りや味は、「エー?これがインドの紅茶!」というものでした。それからです。ダージリンやアッサムの有名茶園の紅茶が飲みたい、どこへ行けば買えるのか。会う人毎に聞き歩きました。しかし、1年経った今でも、私が、紅茶と認識してきた紅茶になかなかめぐり合えません。毎年、カルカッタのオークションで、高値をつけるダージリンの最高級品ファイネスト・ティピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ(紅茶の最高傑作品につけられる等級。略してFTGFOP1)はどこにあるのでしょうか。

 なぜボンベイで私が探している紅茶がないかと言えば、これはインド人の飲む紅茶と、私たち日本人や最大紅茶消費国・イギリス人の好みの紅茶が全く違っているからです。私達が飲むイングリッシュティーと、インド人がチャイと呼ぶミルク入りの煮出し紅茶は、全く違った製法で作られています。イングリッシュティーと呼ばれる私達におなじみの紅茶は、葉の形状をそのまま残した1センチあまりの大きなリーフタイプで、インド人が飲む紅茶は、1ミリから2ミリ大の丸い顆粒状の、コロコロした加工茶(CTC)だからです。CTCとは、引き裂く(Crush)、押しつぶす(Tear)、丸める(Curl)と言う意味で揉んだ葉をCTC機に移してローラーに通して作られます。日本でもティーバックの紅茶はこの製法で作られています。どちらが上等かと言うのではなくこの違いが、味や香りの違いになってきます。紅茶には新芽の1芯2葉の部分をつかうのですが、CTCの製法だとこの部分の茎も軸も一緒に顆粒になります。

 オーソドックスなフルリーフで作られた紅茶は、茎や軸が製法の途中で取り除かれ葉ばかりの渋みの強いタンニンが多いお茶になります。CTCの方は逆に茎や軸が大量にあるぶん渋み少なくなります。インド人の好きな、ミルクをたっぷり入れて飲む煮出したチャイ(ミルクティー)には、色が濃く渋みの少ないCTCの方が好まれています。こちらでは、チャイにはリプトンのレッドレベルという、CTCの紅茶が一番の人気ブランドです。ですから、私がこだわっている産地別のリーフティーの市場がボンベイ市内にはないのです。つまりは、リーフティーはすべて輸出用紅茶でインド国内では飲まれていないのです。

一番上の一芯一葉が紅茶として摘み取られる

それが解ってからは、ニューデリーにある観光客向けの輸出用紅茶を扱っている老舗の茶店「Mittal」で、主人がデリーに出張するときに今年の新茶(紅茶も新しいものほどおいしい)ビンテージ・ダージリンを買っておいしくいれるコツを聞いて楽しんでいます。この店のお薦めは、ダージリン・ビンテージ・マスカットというブランド。グレートは、勿論、FTGFOPのさらにグレード1です。新茶のダージリンには、マスカットのようなさわやかな香りがあるのが特徴です。味よりも香りそのものを楽しむこのダージリンは、紅茶のシャンパンと言われているくらい。さわやかで渋みも少なく、色は薄い黄金色。大手の紅茶ブランドの様にいくつもの茶園の葉をブレンドしていなくて単独茶園直送の紅茶です。

おいしい西洋式紅茶の煎れ方

 おいしいイングリッシュティーの煎れ方は、丸い大きめのポットに1人分2.5〜3グラム位、沸騰した熱湯を注ぎ軽くかき混ぜ蓋をして2分30秒したら茶漉しをつかってカップに注ぎます。ティーパックに馴染んだ人にはちょと物足りないくらい薄いかもしれません。間違っても一時日本で流行っていた、ピストンでギュッ押して煎れるメリオール(これは、本来コーヒー用)で、押しつぶして渋くしない様に。おいしい紅茶は、ぜひそのままで。ミルクを入れたい方は、牛乳を温めて加えてください。(ロングライフの生クリームなんて入れないように) そして、風味と味を変えてしまう、レモンは、絶対厳禁です。


おいしいインド式チャイの煎れ方


 さて、次にインド式チャイの煎れ方。チャイは、日本人が最初に飲むとその甘さとスパイスの香りでギョッとしますが慣れてくると辛いカレーを食べた後には無性に飲みたくなります。スパイスは、香りの高いカルダモン、シナモン、しょうが、クローブ、レモングラス、ミントなどが好まれていますが、これはその家々によって様々です。そして、風邪のひき始めにはしょうが、頭痛にはクローブなどいうような使い方もしています。友人のプレマさんはいつもしょうがチャイ。すごっくたくさん入っていて湯気が目にしみるくらいですが、とってもおいしかったです。いろいろな作り方がありますが今回は、我が家のメイドさんがよく作ってくれるチャイを紹介します。

 鍋に水100ccを沸騰させ、紅茶(CTC)3gをいれ1分ほど煮出す。砂糖大さじ2、牛乳100〜130ccをくわえ、砕いたカルダモン1粒、砕いたシナモン1cm、レモングラス(乾燥5センチ)を入れて、再び、沸騰したら火を止め茶漉しを使って漉しカップに注ぐ。

 インドではチャイ用に、すでにブレンドされているティーマサラというスパイスを使って作ることもありますが、かなり複雑なお味で私はあまり好きではありません。チャイ用には、日本では、ティーパックの紅茶の葉を使うほうがいいと思います。イングリッシュティー(フルリーフ)で試しましたが、渋みが強くとても飲めませんでした。スパイスは、粒状の方が香りが強いですが、お菓子用にご家庭でで使う粉末タイプのものでも代用できます。お砂糖は多めに、甘さが足りないとチャイらしくありません。カレーライスの後にぜひお試しください

参考文献:
Finest Indian tea     Mittal Tea House 
L'art Du The Mariage Freres
金の芽・インド紅茶紀行     磯淵 猛  (角川書店) 
紅茶の本・紅茶と上手につきあう法 堀江敏樹 (南船北馬舎)

Mittal(Tea House)
          8−A,Lodi Colony Main Market New Delhi
          TEL:91−11−4615709
          mitaltea@nda.vsnl.net.in

          (日本語のサイトあり)



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